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『ハロルド・フライ まさかの旅立ち』観ました

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映画『ハロルド・フライ まさかの旅立ち』を観ました。

あらすじ

原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
制作国:イギリス

定年退職し、妻のモーリーンと平凡な生活を送るハロルド・フライ。ある日、北の果てから思いがけない手紙が届く。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚クイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ尽きるという。ハロルドは返事を出そうと家を出るが、途中で心を変える。彼にはクイーニーにどうしても会って伝えたい“ある想い”があった。ホスピスに電話をかけたハロルドは「私が歩く限りは、生き続けてくれ」と伝言し、手ぶらのまま歩き始める。歩き続けることに、クイーニーの命を救う願いをかけるハロルド。目的地までは800キロ。彼の無謀な試みはやがて大きな話題となり、イギリス中に応援される縦断の旅になるが──!?

映画『ハロルド・フライ まさかの旅立ち』公式サイトより

なぁこの感想&ネタバレ

ハリー・ポッターシリーズのスラグホーン役でおなじみ、ジム・ブロードベント主演の感動ロードムービー。との噂を聞き、なんとなく観たいなぁと思っていた今作。

私の記憶の中では、タイトルが『歩け!スラグホーン』に改題されていたため、観たいなぁと思ってから実際に情報にアクセスするまで、ちょっと大変だった。
いいと思った情報は、しっかりメモする。基本のことだけど、みんな忘れないで、後々大変だよ。笑

イギリスらしい風景に心が洗われる

全編をとおして、美しい丘陵地帯や、石畳の街並み、大聖堂など、
イギリスらしい風景が盛りだくさん。

歩き始めたハロルドも、長らくそこに住んでたはずなのに、思わず
「美しいな…」
とつぶやくほど。

ベストセラー小説が原作となっているそうですが、
映像化することの利点ってここですよね!
美しい風景に見惚れました。

道中出会う個性的な人々

衝動的にも思えるようなきっかけで、800kmの道のりを、
手ぶらで歩き始めたハロルド。

たかだか、昔同僚だった人のためにそこまで?と思えなくもないのですが、
その理由は、話が進むにつれて明かされていきます。

そして、道中で出会う人ひとりひとりが、とても心に響いてきました。

以下、ネタバレを含みます。

ルーマニア出身の医師の女性。
道端に倒れていたハロルドを介抱し、痛みまくった足の治療をして、さらには泊めてくれる、という、
懐の深い女性です。

移民の彼女は、医師であるにも関わらず、イギリスでは清掃員の仕事しか見つけられない、と言います。
彼女の話によく出てくる「私のパートナー」も、一緒にこの国で生きていくことを目的に移住してきたのに、
さっさと彼女を裏切って、もう二度と帰ってこない。
そんな境遇の元でも、強く、他者に優しく、しなやかに生きている。
彼女のストーリーは、サブキャラクターたちの中で一番好きだったな。

若く貧しいボーイフレンドが、穴のあいたスニーカーを履いていることに心を痛め、
買ってあげたい、でも彼のプライドを傷つけたくない、
とハロルドにお悩み相談する紳士。

紳士の話を聞く時のハロルドの表情が、この映画イチおもしろかったよ!

イギリスの紳士ってBLのお話する時にも、こんなに格調高くお上品なのね、と
そのギャップも笑っちゃいます。

道中は、
親切な人々に助けられたり、
ハロルドの無謀な旅が、メディアに取り上げられ、
ハロルドに共感した(という建前を持った)人々が集まり、歩くフェス状態になりながら、
お祭り騒ぎパレードに発展したり、と進んでいきます。

贖罪の旅路

末期がんの元同僚を、自分が歩きとおすことで救える、と頑なに信じるハロルド。

ちょっと滑稽にも思えるその頑固さ。
君は死なない、絶対死なない、死なせない、ダメだダメだ
と呪文のように唱えながら、時には歌いながら、彼女を救うために歩き続けるハロルド。

ハロルドが歩き続ける理由は徐々に明かされていくのですが。

ハロルドは、ずっと苦しみたかったんじゃないかな。
罰せられたかった、むちゃくちゃになりたかった、
それでも、その願いすら叶えられず、救われてしまった。

だから、救ってくれた元同僚・クィニーを、今度は自分が救いたかったし、
自分が受けなければいけない苦しみを、過去にスキップしてしまった分、
人生最後に、苦しむことで引き受けようと感じていたんじゃないかな、と思いました。

全てが明かされた後から振り返ると、
君は死なない、絶対死なない、死なせない、ダメだダメだ
と一番伝えたかった相手に届けることができなかった罪悪感を背負っての人生って、
なんて苦しかったんだろ、と涙が出てきます。

足を前に出してさえいれば、いつかは辿り着く

あと28kmのところで、ついに心が折れ、
「もうおうちに帰りたい…!」と妻モーリーンに泣きつくハロルド。

それまでは、帰ってこい、とネチネチ責めたり、混乱からの苛立ちをハロルドにぶつけたり、で
全然サポーティブじゃなかった妻に
「あとちょっとだから歩けや!」(こんな言い方ではない、もっと品と応援力に満ちていた)と逆にお尻をたたかれ、
ようやく歩きとおしたハロルド。

当たり前ですが、末期がん患者を気持ちで救えるわけもなく。
病に侵され喋ることすらできなくなった元同僚・クィニーを目にし、自分の無力さに打ちひしがれます。

それでも、足を前に出してさえいれば、いつかは目的地にたどり着くこと。
歩くということは、自分と向き合うこと。
自分の過去の後悔と向き合い、受け入れようとするハロルドは、旅に出る前の死んだ魚の目のハロルドではなくなっていました。

ハロルドのいなくなった自宅で、自分の人生を見つめ、
ハロルドの不在を噛みしめ、
そしてハロルドのいない人生なんて意味がないと気づいたモーリーン。

最後に、家に帰ろう、と手をつなぐシーンは、
あぁ、家っていいよな、誰かと人生を共有するってこういうことだよな、と感じさせてくれるシーンでした。

ハロルドと出会ったことで、
ゲイの紳士も、移民の医師も、そして人生最期を迎えようとしているクィニーも、
心の中にきらきらと輝くプリズムを見つけることとなったのも、
素敵だったな。

最後まで読んでくれてありがとうございます。
そして、長年更新できていなかったのに、それでも訪れてくださっていた皆様、ありがとうございます。

これからも、いつも心にアラン・リックマン。
スローペースで更新できたら、と思います。よろしくお願いいたします。

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